旅行関係短編

 大阪は万博記念公園にある、太陽の塔に入ったことはあるだろうか。私はある。

 一言で言ってしまえば、岡本太郎ワールドだった。まず塔に入ると、内部に行くまでの通路に、万博開催当時に流れていた岡本太郎作成の動画が流れていた。しかしそれが夢に出てきそうで個人的には結構怖かった。太陽の塔を想像していただければわかるだろうが、あの独特でちょっと不気味な感じを映像にしたものが暗い通路に半永久的に流れているのである。そしてその映像も開催当時、つまり50年ほど前に作られたため若干画質や音声が荒かったのも怖さを増幅させていた。

 そしてその通路を抜けて進むと、太陽の塔の中心部にたどり着く。円錐状のそこは案外広くはないものの、壁は真っ赤にライトアップされた上に鋭い小さな突起がたくさん付いており、その真ん中には「生命の樹」という作品が鎮座していた。「生命の樹」はその名の通り木のような形のオブジェなのだが、鮮やかな青や黄緑や赤に塗られており、その上には微生物や恐竜や鳥や人の模型が自由に置かれている。解説を見ると、この樹は人類の生命の進化の過程を表わしているらしい。確かに根元の方は微生物たちだが、上を見るとヒトに近い生物が何体かいた。真っ赤な空間に、生物の模型が乗せられた鮮やかな色の木のオブジェ。なんかもう、ゲームだったら間違いなくラスボスが出てきそうな場所だったのである。その非日常的空間に圧倒されると同時に、何かと話題の某マスコットキャラクターもここから着想を得たのだろうか…と今更ながら思うなどした。入場には予約が必要だが、興味がある人、岡本太郎を体感したい人はおすすめかもしれない。

 

 

 朝食バイキングだいたい負ける。

 食事に勝ち負けを持ってこない方が良いことは承知の上で言わせていただくが、私はホテルの朝食のバイキングで勝てたためしがあまり無い。

 そもそも朝食バイキングで負ける理由が3つ考えられる。

①朝が弱いため、明確な判断が出来ない。

②同じく朝が弱いため、大量に食べられない。

③そもそもバイキングって難しすぎる。

以上の3点だ。

 まず①から見てみよう。私は低血圧なので、朝が弱い。起きたばっかりだと「ァ…」とか「ゥ~……」とかしか言ってない。そのため、朝起きてご飯を食べられるようになるまでには、多少時間が必要である。ちゃんと朝食会場に行けるように身支度を整えたりしても、明確な判断ができるようになるまでには至っていない。そんな状態でいきなり「パン!白米!地元の魚を使用したお惣菜!ベーコン!シリアル!納豆!卵焼き!新鮮な刺身!ソーセージ!牛乳!旬の果物!チョコレートケーキ!!」とか言われても全然処理できないのである。

 だが「そんなおいしそうなものが多いなら全部食べればいいじゃない」というはらぺこマリーアントワネットの前に立ちふさがるのが②である。先述した通り私は朝が弱い。朝起きてすぐに定食とか食べられない。非常に申し訳ないが、旅館で出て来る豪華な朝食とかも、全て自分ひとりで食べきれたことがほとんどない。ただでさえ胃には限界があるのに、朝だと余計限界に達するのが早くなってしまう。なかなかもどかしいものである。

 そして③。そもそもバイキングって難しすぎる。たくさんのおいしそうなごはんたちの中から、限られた胃の容量と時間を検討した上でその場における最適解を目指していかなければならないのである。これは朝から結構な重労働と言えよう。限られた手札からベストを目指す作業。最早日々の生活がバイキングに繋がっていると言っても過言ではないだろう。というかうちの家族は食事に対して真剣すぎる。2月に親戚の法事で1か月ぶりに会ったのに、うっかり夕飯がバイキングだったせいで近況報告など何もなく1時間半バイキングの話をして終わった。「本当にこれがシメでいいのかな…」「まあ今回、麺類が少ないから難しいんだよね」と最後まで真剣にシメについて考察して感想戦もした。そんな頭をフル回転させる難しい問題を、朝から挑まねばならないのである。

 以上の理由から、朝食バイキングは毎回「これでよかったんだろうか…」という微妙な気持ちで終わっている、気がするのである。もちろんどれもおいしい。おいしいのだが、「もっと最適解があったのでは?」「我々にはもっとできることがあったのでは?」という気持ちになるのである。バイキング道は、なかなかに険しい道と言えよう。

 いつか最適解を叩き出せる日が来るのだろうか?とも思うが、なんだか嬉しいような寂しいような気持ちになってきてしまう。とりあえず、しばらくはこの道をひたむきに精進していこうと思う。バイキング道は、まだ始まったばかりなのだから。

 

 

 旅行の計画を立てる時、私は割とガイドブックを見るタイプである。

 とは言っても、ガイドブックを見るようになったのは割と最近のことだ。それまでは「まあネットで調べればいいんじゃない?」と思っていた。

 そんな私の考えを変えたのは、同じく旅行好きの母がガイドブックをよく買っていたのがきっかけであった。母は正直こちらがビビるほど、旅行の度にガイドブックを買っている。まだ行くと確定していないところも買っている。そのうち全国制覇しそうだ。そんな母が、とある旅行の計画を立てていた際に、「読む?」と彼女のコレクションから一冊差し出してくれたのである。その時は「まあ…」とあまり乗り気ではなかったのだが、読んでみたところ、とても良かった。そのため、計画を立てる際にはよく参考にしている。

 どこがよかったのかと言われると、わかりやすかったのである。もっと言うと、旅行に際して最低限必要だろう情報―――旅行先の地図、主要な駅や各観光地へのアクセス方法、それに伴う時間、外せない有名なスポットやお土産などなど―――が全て載っているのだ。これらの情報は、調べればネットでもわかる。しかし、それがわかりやすく一冊にまとまっており、全体像を簡単に掴むことができるのがガイドブックなのである。さすがプロの仕事といえようか。旅行の計画を立てる際に何かわからないことがあっても、いちいち検索するまでもなくこれを見ればだいたいわかる。そんな頼もしい存在なのである。

 もちろん、ネットで調べることの良さもある。ふと思い立った日でも気軽に調べられるし、よりディープな情報を知りたい時はうってつけだろう。そう考えると、あまり知らない土地に行く際にはガイドブックを参考にするのがいいのかもしれない(何度も行ったことがある場所のものを見てみるというのも面白いが)。

 なんにせよ、旅行に行く際はガイドブックを一度は読んでみることをおすすめする。図書館にも置いてあるので、軽く見てみるだけでも良い。既にネットで一通り調べ、もう万全な計画を立てた人も見るのをおすすめする。「別にもう調べたし…」とか思いながらも、なんだかんだ最後まで読んでしまい、また新たな楽しみが増えるだろうから。