2021-01-01から1年間の記事一覧

〈物語〉の北条義時⑴ ‟悲劇の主人公”としての義時―坪内逍遥「義時の最期」

〇はじめに 〇見ていく作品の概要について 〇近代の義時ってどんな感じ 〇坪内逍遥「鎌倉罪悪史」三部作 〇「義時の最期」あらすじ ・一幕 ・二幕(義時登場) ・三幕 〇まとめ―‟悲劇の主人公”北条義時 〇はじめに 2022年のNHK大河ドラマ、「鎌倉殿の13人」…

合流大火災のその中の人、現し心あらむや。――堀田善衛『方丈記私記』感想

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。 「方丈記」は、このような文章から始まる。所謂「中世の無常観」みたいなものを体現した文章と言えるだろう。鴨川に近い神社の禰宜の子として生まれた長明が、「河」で「無常」を表現しているのはなかな…

初老の歌人と学生服を着た将軍の話――川田順「実朝に逢ふ」

川田順「実朝に逢ふ」 山海居二階の客間に、床の間をうしろにして、右大臣実朝公が行儀正しく座つてゐられる。衣冠束帯でなく、紺地・詰襟・半ズボンの学生服を着用。お顔を拝すると、双頬さくら色を呈して、眼はやや腫れぼつたく、口もとは尋常で、まだ十…